ビルドンブンコ

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見る鳩

 電線に次々と鳩が集まっている。

 彼らはどのように意思疎通をしているのだろうか。電線で思い思いに毛繕いに勤しむ鳩たちは鳴き声を発さない。静かなものだ。ただ、頭上に鼠色の鳩が次々と集まってきているのである。

 何が彼らを呼び寄せるのだろう。鳩の力か、電線の力か。なんにしても、ここは鳩にとってパワースポットのようなものかもしれない。

 観察しているうちに私は気づいた。一羽の鳩がこちらをじっと見ていたのだ。胴体は動かさず、時折首を傾げるように回しながら、それでも眼だけはひと時も逸らすことなく私を見ている。

 私を見下ろしている。私を見下している。

「お前はここに来れないだろう」

 そう言われている気がした。彼らは見下しているのだ。足をつけて地面を伝って移動することしかできない人間、否、地上の生物を。

 ただ毛繕いをしていただけだと思っていた鳩。しかしそれは違ったのだ。彼らは見せびらかしている。人類が持たない羽を自慢しているのだ。

「私たちには羽があるのだぞ」

 でも、鳩には手が、腕がないだろう。嘴では掴むことしかできない。人の手は握れるし、叩けるし、弾ける。確かに空は飛べないが、地上では最も自由だ。

「可哀想に。地上の世界しか知らないのか」

 鳩の視線が憐れみを含んでいる。

「君たちは建物を避けてせっせと道を歩く」「我々は建物の上を目的地に向かって真っすぐに飛んで行く」「効率的だろう」「社会はあるがルールはない」「我らが仲間同士で殺し合うことはない」「人間はどうかな」

 電線に集まっていた鳩は一目で百羽を超えていることがわかる。

 そのすべての目が、私を見つめていた。