ビルドンブンコ

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CzTS【5】

「警部、待ってください。彼女は犯人ではありません」

「探偵!」容疑者と目撃者は待っていたかのように声を上げた。

「探偵、悪いが今回は間違いない。こいつが犯人だ」警部は掴んでいた腕を引いて容疑者を探偵に見せつけた。

「いいえ、違います」探偵はゆっくりと首を横に振った。

「根拠は!」警部は脅すような声で、叫ぶように尋ねた。

「警部、まずは容疑者ちゃんから手を離してください。話はそれからです」

 少し迷った様子だったが、警部は言われた通りに手を離した。

 その瞬間、探偵は容疑者に駆け寄り、彼女の手を掴んで引き寄せた。

「探偵、どういうつもりだ」

「容疑者ちゃんは犯人ではありません」容疑者の手を握ったまま、探偵は彼女を抱き寄せる。「なぜなら、容疑者ちゃんは容疑者だからです」

 そう言うと、探偵は容疑者の手を引いて部屋を飛び出した。

「待て!」

 追いかけようとする警部の体を、目撃者が押さえた。

「何をする目撃者!」警部は必死にそれを振りほどこうとする。

「行け、探偵! お前の勇姿、俺が目撃してやるぜ!」

 目撃者の声に背中を押され、二人は門に向かって一直線に走る。玄関を出て、駐車場を横切り、守衛小屋の前を通る。

 門を出てすぐの草村に、二人は身を潜めた。

 何とか目撃者を振り払ったらしく、警部も二人を追って部屋を出て来た。彼も門に向かう。

 すると、守衛小屋から一人の老人が出てきて、警部の前に立ち塞がった。

「守衛さん、探偵はどっちに行った?」警部は尋ねる。

「さあ、見とらんね。探偵が入っていくのはさっき見たが、まだ出てきとらんよ」

「チッ、まだ校内か」警部は来た道を引き返して、校内へ戻って行った。

「ザル警備じゃからの」身を潜めている探偵と容疑者に聞こえるように呟くと、老人は守衛小屋に戻った。

 二人はすぐに走り出した。探偵の手はまだ容疑者の手を握ったまま離さない。

「いいのか探偵、こんなことして」息が上がっているのを悟られないようにしつつ、容疑者は口を開いた。

「やっぱり、真面目だね」探偵は笑った。「僕は探偵。依頼人の望みを叶えるのが仕事だ」

「依頼人?」探偵の言葉の意味を考えて、容疑者は走る速度を徐々に緩めた。「それって、ウチのこと……?」

「そう」探偵も足を止める。もう校舎からは十分な距離を取れている。「僕が引き受けた依頼は、容疑者ちゃんを犯人にしないことだ」